和枝に「好きになれへんわ。」と言われ、「えっ?」と驚くめ以子。帰ってきた希子が何事かとまばたき。

 

板の間に上がった和枝は、台所のめ以子に背を向け、「あんたを見てるとむしずがはしる。いびられても、泣かされても『私は好きです。』って。まるで仏さんやな。気持ちええやろう。」と、目に涙を浮かべ言う。「そんなつもりは・・・・。」戸惑うめ以子。「許された方が、どんなに惨めか、やなんて、思いもつかへんのやろ!」和枝は自室に戻ろうとする。「待って下さい!」め以子も板の間へ上がる。希子が慌てて揚げ物途中のガスコンロの火を消す。「私、いびられたことも、泣かされたことも忘れてませんよ!やですよ!思い出したら、腹が立ちますよ!だけど、やなとこも、いいとこも一緒だと思うから。あれだけ舌を巻くような意地悪が出来たのは、お姉さんが細やかで、人の気持ちがわかるからで。それがお料理に向かうと、優しいお料理になるから、だから、腹が立つけど、好きになっちゃうんじゃないですか!」とキレる、め以子。「どんだけおめでたいんや・・。あの料理に何か入ってると思わへんの?」と和枝。「えっ?」と、ひるむ、め以子。「わてが好意だけでやってたと、なんで思える?」「お、お姉さんは・・・・そんなことしません。」め以子がそう答えると、和枝は板の間の上がり口に立っていため以子の肩を押し、台所へ突き飛ばす。コンロのそばにいた希子がめ以子に駆け寄り、身体を支え、め以子の肩に手を添える。お腹に手を当てるめ以子。2階から降りてきた静が「か、和枝ちゃん!」と声をかける。「それでも好きやなんて、言えるんか!一緒に暮らそなんて、思うんか!」と目に涙をためながら、大声でめ以子に向かって怒鳴る和枝。「・・・出てって・・・・・出てって下さい!」と涙しながら言うめ以子。「それでええんや。わてを追い出すんは、あんさんや。」涙をこぼし、毅然とした態度で部屋に戻る和枝。台所に押し倒され、座り込んだまま、「どうして・・・・どうして・・・どうしてこんなふうになっちゃうんですか!」と叫ぶめ以子。希子がめ以子の肩に手をかけ、なだめる。

 

夜、板の間の階段から上を見上げる悠太郎。「それで、め以子と姉さんは?」板の間に居る静の方に振り返り、座る。「部屋。め以子はんには、のりちゃんがついてくれてる。・・あれは、ちょっと離れさせんと。もうどうにもならん、思うわ。あ・・・追い出したいからと違うで。」と最後の一言を自然な笑みを浮かべ、悠太郎に言う静。「分かってます。」悠太郎も微笑む。

 

自室で静かに正座している和枝。

<ナレーション:それから程なくして、和枝は一旦倉田の別荘へ移ることになりました。>

 

数日後、倉田が西門家を訪問。一同が座敷に集う。

「昨日見に行ったら、元気んなっとったで。土いじりやっとった。」と和枝の近況を報告。「ほんでな、やっぱり和枝ちゃん、誰も和枝ちゃんの事を知らんとこに行った方がええと思うんや。」と倉田が提案。悠太郎は「せやけど、いつまでもお世話になるのは・・・・・。」倉田は「和枝ちゃん、話した農家、見に行きたい、急に言い出してな。こんな自分でも求めてくれるんやったら、そこに嫁に行きたい、と。」と、和枝が縁談を受け入れる気持ちになったことを告げる。「農家・・・和枝ちゃんが。」静が驚く。め以子は神妙な顔で「倉田さん。あの・・・私、なんであんなに嫌われちゃったんでしょうか?」と聞く。「うん。和枝ちゃん、前にぼそっと言うとったんやけどな。自分がされたんと同じ事をあんさんにして、それでも全然めげへんあんさんがおって。しかもあんた、自分のこと好きや、とまで、言う。何やもう、自分のくだらなさ、つきつけられて、やりきれんようになったん、ちゃうかなぁ。」と和枝の気持ちを話す。それを聞き、「イケズは私の方だったんですね・・・・・知らない内に、ずっと。」と、しょげるめ以子。隣の悠太郎も辛そうな顔をする。

 

和枝の部屋の荷物を希子と共に柳ごうり【柳で編んだ旅行用や引っ越し用の荷物入れ。現代のプラスチック製の衣装ケースのようなもの。】に詰める作業をする、め以子。裁縫箱らしきものを手に取り、その重さに何かを感じ、揺さぶった後、開けてみる。中には白い木綿や柄物の布きれが。全部中を確かめる。「これ・・・・全部、おむつ。」希子も手を止め、め以子が胸元に握りしめているおむつを見て、「作ってくれてたんですね。」と微笑む。和枝にメンチカツの膳をひっくり返されたり、ぬか床を処分されたり(全部捨てられる寸前にめ以子が和枝を突き飛ばし、回収)、好きになれへんといわれた、数々のイケズとおむつを縫ってくれていた和枝の様子が頭をよぎる。「お姉さん・・・もう、イワシみたい。嫌いになんかなれない。」おむつをきつく握りしめ、泣く様子を希子はただ微笑んで見ている。

 

市役所。大村が紙で工作していた、小学校の中央ホールの模型を囲み、みんなが説明を聞いている。「この建物はな、この真ん中のホールを通らんと、絶対行き来でけんようになってんねん。ケンカして、お互い避けとったのにな、出会い頭に出会うてしまったりしてやな。」児童に見立てた模型を動かす。笑いが起きる。「嫌でも面ぁ、つきあわされてしまうんや。こういうの、ようないか?」とみんなに聞く。みんな頷き、「ええですね。」悠太郎は笑顔で同意。

 

和枝の旅立ちの日。倉田と日傘を差し、旅行鞄を抱えた和枝が、連れ立って駅へと向かっている。その先にめ以子が風呂敷包みを抱え待っていた。「何で?」とつぶやく和枝。「うん・・・さ、さあな、たまたまとちゃうか。」と、とぼける倉田。「い・・・言い忘れたことがありました。」と、め以子。「何?」と和枝。「ごちそうさんでした!」と、頭を下げるめ以子。頭を上げ「イワシ。」と付け加える。「なんやいな、わざわざ、そんなこと言いに来たんかいな。」と、呆れる倉田。「はい。私はお姉さんの事、大好きですから。これ、お礼です。私のぬか床です。好評なんですよ。」と、目を潤ませ、強気で和枝に言い放ち、風呂敷包みを差し出す。「要るわけないやろ、そんなもん」と、和枝。「そんな事言わずに持ってて下さいよ。私の忘れ形見として。」と、食い下がる、め以子。「あんさんの事なんかこれっぽちも覚えときとうないんや」と、つんとすます和枝。「これはイケズなんです。」「はあ?」と和枝。め以子はひるまずに「私がお姉さんの事を好きだっていう事がお姉さんを怒らせるなら私はお姉さんを好きだって言い続けます。それが私のイケズです。きちんとイケズにはイケズで返したいと思います。」と、宣言。「えらい大層なイケズを・・・」目を閉じ、深呼吸をし、和枝は日傘を畳み荷物を置くと笑顔を作った。
「…そりゃ、どうもおおきに。」と、にっこりと風呂敷包みを受け取ったかと思うと、思い切りぬか床を地面に叩きつけた。ガシャーン!め以子の持ってきたぬか床が割れる音がする。「ああっ!」倉田が大声で叫ぶ。「あんさんのために割ったってんで。なん~ぼでもイケズができるように。」と、以前の和枝の意地悪な笑顔が復活。それを見て「ま、また…また送りますから。」と、今までの緊張してこわばった顔から笑顔になるめ以子。「行きまひょ、倉田はん。」と日傘を差し、荷物を手に、すまし顔して、すたすた駅へ向かう和枝。汽笛の音が聞こえる。ちらっとめ以子を見て、慌てて和枝を追う倉田と共に去っていく和枝に、め以子は「ずーっと!ずーっとイケズし続けますから!」と口元に手を当て、大きく声をかけた。その声を聞きながら振り返らず、駅へ向かう二人。「何やえらい屁理屈やな。」と、倉田が苦笑する。「ホンマ、かないまへんわ。」和枝もにこやかに、明るい笑顔で駅へ、新しい人生へ、歩み出す。目に涙をうかべ、遠くなる背中を見送るめ以子。地面にしゃがみ込み、たたきつけられ、割れてしまった風呂敷包みの中のぬか床に「あ~あ…ごめんね」と謝り、なでる。<ぬか床の声:いいよ、役に立てたみたいで。おばあちゃん、嬉しいよ。これで、これからも少しは繋がっていけそうだね。>風呂敷包みを抱え、立ち上がり、もう一度和枝達が去っていった方向を見つめる、め以子。汽笛の音がまた聞こえる。

 

それからしばらくして。

台所と板の間の上がり口のところに腰掛け、静は、め以子が作った小魚の瓶詰めを手に取る。「何?これ…」包丁とぎをしながら、「オイルサーディンっていうのを作ってみたんです。美味しく出来たんで、お姉さんに送りつけようと思って。」と、答える、め以子。「畑の肥やしにされるんちゃうか。」と、静が言い、笑い合う二人。

うま介。悠太郎の横に山積みの書籍。竹元が焼氷を食べながら、「私が読んでおいた方がいい所だけ抜き出しておいてくれ。」と、言う。うんざりとした表情で、「…何で僕が竹元さんの下働きせんといかんのんですか?」と、言う悠太郎。その時、突然、強い揺れが。山積みの本がばさばさ床に落ち、焼氷もテーブルにひっくり返る。揺れが収まり呆然とする竹元。

 

西門の台所ではめ以子が棚のものが落ちないよう、手を添え、静はその場で頭をかばい、小さくなっている。包丁が床に滑り落ちた。揺れが収まり、まだ震えが止まらぬ静。何事が起きたのかと顔をゆがめるめ以子。

 

<ナレーション:め以子の包丁を滑らせ、悠太郎の本を崩した、この揺れは、後に関東大震災と呼ばれることになり、それは大坂という、都市の運命を、そして、西門家を大きく揺り動かしていくことになるのでした。>

 

 

 

来週は第12週「ごちそうさんまでの日々」関東大震災で東京の人々はどうなったのか?

東京に様子を見に旅立つ室井と悠太郎。避難していた人たちへの炊き出しで、問題を起こすめ以子。

※ネタバレ、すいませんm(_ _)m。気になる方も多いと思うので。ネタバレ情報によると、卯野家の方々は無事です。しかし、め以子にとって大切な人が・・・誰のことかは、週末にその事が判明。こちらは伏せておきます。気になる方は12週目のネタバレ情報、検索をどうぞ。

 

※レシピブックが12月20日、タイトル「NHK連続テレビ小説 ごちそうさんレシピブック」定価:1365円(税込)開明軒~始末の料理までの内容で発売予定だそうです。

 

※年内は第13週目までの放送です。ノベライズ上巻もここまでの内容。